自賠責保険での湿布代等の不払い問題
自賠責保険での湿布代等の不払い問題
自賠責保険での不払い問題の多くは損保会社の当社算定基準の強要が原因です。損保会社が一方的に料金の算定基準を押し付けることは独禁法に抵触する可能性について載せましたが、未だに当社算定基準を労災準拠だとして強要するところがあります。
確かに労災の約1.2倍という任意の自賠責算定基準が医師にあり同様に柔道整復師にも労災の約1.2倍の算定基準を各損保会社が当社基準として使用している所が多いですが、当会ではこの考え方そのまま柔道整復師に当てはめるのは間違っていると考えます。なぜなら、労災ひいてはその基になっている健康保険の算定基準が医師のものとは違い、不備、欠陥だらけの時代遅れの算定基準 だからです。
大まかですが例えば通院での治療で
医師の場合
再診料+薬剤料 + 特定保険材料料 + 処置医療機器等加算 + 処置料(年齢加算あり)内容により点数が細かく設定されています。
柔道整復師の場合
後療料+電療料(罨法料含む)ほぼ定額のこの料金にすべてが含まれています。
例えば医師の場合持ってきた腰部コルセットを巻いてあげると35点加算されます(コルセット代は含まず)が整復師は加算はなく後療料に含まれます。
同様に、湿布を使用した場合もその費用は医師は加算されますが柔道整復師の場合、後療料に含まれることになります。
(最終改正 平成 30 年5月 24 日 保医発 0524 第1号)
1-10「 骨折、脱臼、打撲及び捻挫に対する施術料は、膏薬、湿布薬等を使用した場合の薬剤料、材料代等を含むものであること。」
医師の場合は行った必要な処置や材料はその都度加算されます、ですから医師の場合、健康保険での治療に際して保険の負担額以外の実費の徴収が禁止されています。
柔道整復師は再検料・材料費(包帯などの衛生材料費等)・処置料(手技や技術料)など必要なもの全て後療料の数百円で完結するのは難しいです。ですから、柔道整復師は健康保険では賄えない部分については患者からの実費徴収が事実上認められています。この部分が大きな違いで問題となる部分です。
(最終改正 平成30 年5月24 日 保医発 0524 第1号)
1-11「患者の希望により後療において新しい包帯を使用した場合は、療養費の支給対象とならないので、患者の負担とするもやむを得ないものであること。なお、その際、患者が当該材料の使用を希望する旨の申出書を患者から徴するとともに、徴収額を施術録に記載しておくこと。」
実際、健康保険では多くの接骨院では後療料で補えない材料費等の部分については患者負担か整復師のサービスとなってしまいます。
労災においては健康保険よりは改善されているとはいえ、再検料は月に2回までしか認められず、材料費は拡充されていますが、例えば腰椎の簡易コルセットや頚椎カラーといった材料費の納入する価格は変わらないはずですが医師の算定よりもはるかに低く設定されています。湿布代においても算定項目はなくやはり後療料に含まれるものだと考えられます。
実際、労災の患者さんは災害被害者でもあるので患者さんからの実費徴収は難しく、整復師の負担(減収)となっている所が多いのではないでしょうか。
話を自賠責に戻しますと、交通事故は「交通災害」であり、災害医療を扱う労災保険の診療報酬基準に準拠するのが適切との判断から「労災準拠」とのことです。いわゆる被害者という考え方で“救済”という意味も含まれていると思いますが、その費用の負担を患者さんや整復師に転嫁するような柔道整復師の健康保険や労災保険の算定基準をそのまま転用した当社基準を強要し、端から湿布代やコルセット代の支払い拒否することはこうした「被害者救済」という考え方には合わず「必要かつ妥当な実費」のすべてを算定することが当然だと考えます。また、労災は災害医療の観点から健康保険のような多部位や長期の逓減を設けていませんが、こうした逓減も強要してくる損保会社もあり、もはや労災準拠でも無くなっています。そうした不適切な損保会社に対して当会では当該損保会社に注意するとともに国交省や金融庁など監督官庁を通じて損保業界に対して注意、是正を図って頂いています。
参考
また、日本接骨師会では、先ずはすべての基になっている健康保険を医師の算定基準(告示)を基に整復師の業務に似合った算定基準をつくる「告示準拠の算定基準」の策定を厚生労働省に求めています。
参考
こうした当会の活動は柔道整復師の業務の正しい理解を求めるもので、無論、不正や濃厚過剰請求などをかばうものではありません。整復師も自賠責保険を取り扱う者として正しく「必要かつ妥当な実費」を理解することが重要です。
参考
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