交通事故の警察へ提出する診断書作成の留意点
交通事故患者の警察に提出する診断書作成の留意点
これまでに整復師の診断書、証明書が様々なところで認められるようになりましたが、今回は交通事故の診断書の書き方についての注意点をあげてみました。
(日本接骨師会では証明書ではなく、診断書を提出しています 資料1 日本接骨師会診断書 )
一般的な診断書(傷害保険や傷病手当金申請等)との相違点
一般的な診断書がどちらかといえば「私傷(加害者がいない)」が多いのに対して、交通事故は相手・加害者がある場合が多い。この場合、その証明内容が単に患者にとどまらず、さらに加害者の対しても診断書の内容(傷害の程度)により加害者の事故に関する責任や処分に影響を及ぼす可能性が多いという事です。
警察に提出する診断書作成のポイント
どのような診断書でも当該傷病に対する正しい表記が大事なことは当然ですが、交通事故で警察に提出する診断書では特に「証明期間」が大事です。この証明期間によって傷病の程度を判断することが多いからです。(いわゆる重症や軽傷の判断)しかし、この期間の証明が複雑で困難です。
「全治」と「安静加療」の参考
初診時の診断書の証明には「「全治~週間」や「~週間の安静、加療を要する」等が使われることが多いです。
「全治」とは「完全に治癒すること」や「全有効治療期間(治療を必要とする期間)」とするところもあり、またその「治療期間」においても「一般の生活に支障がない」とするところが多いですがスポーツ選手など職種によりそれでは困る場合が多くあります。こうしたことから同じケガでも基準の違いにより、期間に差が出ます。
「安静加療期間」とは当面の傷病の安静加療に要する期間ということで「全治を目指す期間」というほどではなく、具体的には特に甚大な症状が軽減するまで「安静期間」が参考になります。「安静期間」ですから「治る時期」ではないので期間を設定しやすく、このようなことから使用用語としては「安静加療」期間の記載の方が適当と思います。
証明期間と実際の診療期間に関する注意
診断書記載期間について「制限期間」的に考える必要はありません。警察に提出する診断書の証明期間のもつ意味は「ケガの程度」で「完治」までの証明ではないという考え方です。しかし「安静加療2週間」とすると、それを超えた場合いい加減な誤診と思われる心配により猶予をもった期間を記すことがあります。この場合患者からは喜ばれることが多く、また、患者の被害者感情から一般的にはそうした取り扱いになりがちだが、交通事故の場合の加害者にはむしろこのことが反対に困る場合がありますので診療が証明期間を超えても、そのことについて「誤診」の指摘は敢えて問題とされるべきではありません。
警察への提出する診断書への再認識
警察当局によれば、「交通事故患者の警察へ提出する診断書は交通事故事件に関して関係者の原因と責任の判断を行う場合の参考に供する」というものです。単に当該傷病者の診療のためというだけではなく、原因者•加害者の措置に関する判断の参考としてまで用いられるという別の重大な意味を持つものであるという認識が求められるものです。さらに診断書内容に関して裁判で証言を求められることもありますので、(資料2 刑事訴訟 治療照会書) 整復師として、こうした目的に資す診断書作成を行うものです。したがって、警察へ提出する診断書に関して、別途、交通事故の診療費取り扱い事案に用いることは却って不適当となる場合があります。持に、損害保険会社など関係者の中にあたかも記載された期間をとらえて「揚げ足をとる」ようにこうした診断書の取り扱いを行う場合にはその注意が求められます。こうした注意を理解し、改めて交通事故診断書のもつ意味を認識することが大切です。
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