なぜ接骨院は株式(有限)会社なのか?法人開設に見る厚労省の矛盾
まもなく確定申告の時期です。近年は法人を設立する先生が増えています。法人にする、しないは自由ですが事業を大きくしたり収入が多くなると法人の方が特に税制面で優遇され節税効果が大きいと言われています。
一般的な法人(以下「株式会社」という)は商法で規定され利益を目的にしていますが、患者さんに対して平等、公平に医療を提供しなくてはならない医療機関は公益的専門行為として利益目的である株式会社での運営を医療法で禁止しています。その為医療機関は医療法による医療法人を設立、運営しています。しかし医療法人は医師や歯科医師が常時勤務する診療所、病院または介護老人保健施設の開設を目的として設立される法人と定められており、柔道整復師は「柔道整復師法」に基づく「施術」であり、医療法上の「医療」ではない、つまり柔道整復師の施術所は医療法上の医療機関ではないとして医療法人を設立することは不可としています。
このホームページでは繰り返し訴えておりますが柔道整復師の業務は医行為の一部であり医療です。ですから原則は医療法に基づいた医療法人の設立が望ましいですが厚生労働省は前途のように医療ではないとし認めません。ならば、柔道整復師法などで新たに法人の規則を設けるべきですが時間がかかり過ぎてしまうので今後に期待するとして当時、株式会社による法人設立を提案。しかし前途のように株式会社は営利目的の法人ですので医療行為を業とすることを禁じており、実際に昭和24年に厚生省は「医療法の関連上も商法による施術所の開設は望ましくない」として柔道整復師の商法による法人を禁止しています。お気づきと思いますが当時の厚生省は「医療じゃないから医療法人はダメ。」としながら「医療法上、株式会社はダメ。」という支離滅裂で全く不合理な行政を行っています。
昭和24年医務局長回答
〇有限会社経営による施術祈の開設について
(昭和24年7月8日 医収第754号 佐賀県知事あて 厚生省医務局長回答)
〔照会〕管内柔道整復師より個人営業を廃し有限会社を設立してその社長として施術所を開設し自から施術したい旨申出があるが、あん摩、はり、きゅう、柔道整復 等営業法施行規則第3章の業務に関する規定には施術者自らが施術所を開設しようとするときの規定で施術者以外の者が施術所を開設する等のことに関する規定がないから施術者以外の者に施術所を開設させることはできないように思料せらるるがこれが取扱に関し何分の御教示をお願いいたしたい。
〔回答〕5月4日附医第634号で貴県衛生部長から照会の、有限会社経営による施術所の開設に関しては、「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法施行規則」第7 条の規定においても施術者が施術所の開設を届け出ることになって居り、かような経営主体による施術所の開設を予想していないのみならず、医療法第7条第2項の規定との関連上も有限会社による施術所の開設は望ましくないと考えられるので然るべく指導されたい。
(以下略)
アンダーライン当会記
(当時は資本金などの規模の小さい有限会社がありましたが現在は有限会社の新設はできません。)
しかし、法人にすることで税金での恩恵があるのにも関わらずそれを認めないとするのは日本国憲法第14条を根拠とし「政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」 旨が規定され、 税に関する法律においても「すべての国民にとって平等、公平であること」という税の大原則に抵触する行為です。
広く法人の設立が認められているのに柔道整復師だけはその恩恵を受けられないこうした当時の厚生省の不公平で差別行政に対して日本接骨師会では接骨院の法人化に取り組みました。
平成4年1月9日
厚生省
厚生省健康政策局医事課企画法令係長
医療法に基づく法人設立は困難。一般業種が法人設立の基本としている商法に基づき法人設立に取り組む。後日、さらに適当な法人設立の可能性が生じた場合に協議する。尚、営利目的とする件についてはさらに保険局と適宜協議し適性を図る。
大蔵省より照会や問い合わせのあった場合には今回の協議を踏まえたうえで法人設立に協力を戴きたい旨了承。
国税庁
国税庁直税部所得課税課課長補佐
国税庁当局として柔道整復師の法人設立の可否の認定は困難。
厚生省当局が医療法に基づく医療法人が困難ならそういうことになる。
一方、商法などでの法人設立となればそれで受けることになると思う。
法人なった場合の税制はそれに応じた取り扱いとなる。
こうして当時の厚生省の苦渋の選択の末に商法による法人がみとめられ平成6年におそらく初の法人の接骨院が東京都足立区に誕生しました。しかし、日本接骨師会には仕方なく法人を認めるも社団法人(日整)に対しては「営利法人は医療を提供する主体として不適当」として回答し法人設立をしないよう協力を呼びかけています。繰り返しになりますが医療を提供するのに医療法人はダメ、代替えの処置もないまま法人を禁止する行為は税の平等に抵触するものです。
医事第14号
平成5年1月27日
社団法人日本柔道整復師会 会長 殿
厚生省健康政策局医事課長
有限会社による柔道整復施術所の経営について(回答)
平成4年12月25日付け日整発第280号により照会のあった標記について、下記 のとおり回答する。
記
柔道整後師の行う施術は、広く国民医療の一環を担うものとして社会的に認識され、また、行政上も取り扱われているところであり、他のサービス業とは性格を異にするものである。医療法(昭和23年法律第205号)第7条第4項は、営利を目的とする者に対しては、病院、診療所または助産所の開設を許可しないことができる旨が規定されており、これらと同様に<医療を提供する柔道整復師の施術所の開設についても、同様の取扱いをするのが適当である。
すなわち、商法(明治32年法律第48号)等に基づ株式会社、有限会社は営利法人であることから医療を提供する主体としては不通当であり、施術所の開設者としては望ましくないとして指導しているところである。照会において指摘のあった昭和24年7月8日付け医収第754号も基本的に同様の考え方を示しているものであるので、貴会におかれてもご協力願いたい。
なお、企業が職員の福利厚生等を目的として施術所を開設するような場合にあっては、営利法人が開設者で為っても上記の前提に反するものではないので、念のため申し添える。
また、医療法人は株式会社より法人税が優遇されています。当時は緊急避難的なものでしたので本来は柔道整復師の業務の性質から医療法に準じた制度を作るべきですがご存じの通り現在もありません。厚生省と整復師業界の既得権者への忖度により法の趣旨まで歪めてしまい、結果、税以外でも様々な面で不合理な制度が多く非常に働きにくい環境となっており日本接骨師会では早急な改正への活動に取り組んでいます。

