科学的根拠による規制緩和を
ホーム > 科学的根拠による規制緩和を

科学的根拠による規制緩和を

2023年09月12日(火)9:48 AM協同組合日本接骨師会

(長文ですが柔道整復師という資格の意味について考えて頂ければ幸いです。)

 

 新型コロナ感染症が5類の扱いになり徐々にコロナ前の社会に戻りつつありますが、そのコロナ禍において医療現場では医療資源不足が問題となりました。これはコロナ禍という非常事態時だけの問題ではなく、平時においても救急搬送時のたらい回しや病院の待ち時間など特に地方おいては深刻な問題で「医療崩壊」という言葉もよく耳にします。
その原因には医師不足などの医療資源自体の不足と、国が医療を警察や自衛隊のようにコントールすることが出来ない現在の制度の問題などが考えらます。医師不足においては「医療の質の低下」を理由に今後も大幅にその数が増えることはないでしょう。医師の増加による「医療の質の低下」自体にしっかりとしたエビデンスがあるのでしょうか?逆に、必要な医療が迅速に受けられないなど患者のニーズに応えられないことが国民医療としての「質の低下」なのではないでしょうか。
その中で、過労問題などで医師などの医療現場の働き方改革が叫ばれています。医療の大部分を医師に頼りすぎる今の制度を見直し、看護師や理学療法士、放射線技師等コメディカルと呼ばれる資格者に医師の関与がなくても安全に行える行為を任せるタスクシフトやタスクシェアによって医師の負担を軽減し、医師は高度な医療に専念することで、パンデミックや予想されている大規模災害などの緊急事態に普段から備えることが重要な事だと考えます。
柔道整復師業務でも規制を緩和しⅩ線検査を導入することで、現在よりも状況に応じた的確な応急処置が可能となり比較的軽度の骨折などでの救急搬送を減らすことが可能だと考えます。
現在、柔道整復師はその特性を活かし、運動器の様々な症状に対応していますが、50年前の制度では現在の医療水準の患者のニーズに応えるのには困難です。また、保険者は急性外傷しか認めないとして調査、照会を強化し、厚生労働省も柔道整復師にしっかり外傷を扱えと促すように骨折や脱臼の料金を上げましが骨折や脱臼の整復や経過観察に必要なⅩ線検査は認めず、まるでイソップ童話の「キツネと鶴のごちそう」の様に食べづらい器に盛り食べたかったら食べてみろというような意地悪としか思えない行政をしています。また、Ⅹ線検査が必要ならその都度、医師の所にいけばいいとし患者の負担や選択権など全く考えていません。こうした行政は柔道整復師という職業を認めながらも、その遂行を許さないのは「職業選択の自由」にも反するものと考えます。
図らずとも我々柔道整復師は代用教員ならぬ外傷専門の代用医師のように発生し、今でも、医師から独立して外傷を扱うことが出来ます。現在にこのような制度、資格を新たに設けることなど到底無理なことです。ですからこの貴重な整復師の制度を更に国民に有益になるよう活用するべきと考えます。また、この提案は医師から患者を取るというようなものではありません。以前は問題とならなかったような軽微な事象でもすぐに訴訟となる現在の状況で、柔道整復師も無理して患者さんを看るようなことは考えられません。あくまでも患者のための柔道整復師業務遂行のためで、検査を行うことで医師への紹介など、より円滑な医接連携を行うためにも必要なものだと考えますので業際問題として政治的に扱うのではなく、科学的根拠に基づいた議論をお願いするものです。


柔道整復師の資格の意味とは何なのか。無資格者との大きな違いは国民のために制度があるということことです。この制度が国民から乖離するとこのないよう時代に合わせてより患者のための制度にする為に日本接骨師会は発足より柔道整復師のⅩ線検査の導入のための活動を続けており、ご理解いただいた日本維新の会より法案の提出をして頂いたこともあり(参考資料「柔道整復師法一部改正案を国会に提出していただきました!」)、長年にわたり国に対し要望や質問を繰り返してきましたが厚生労働省の答えは科学技術の進歩を無視し、科学的根拠のない回答を繰り返しています。このような厚生労働省の対応を皆様はどう考えるでしょうか。

柔道整復師のⅩ線検査導入を考える上で様々なご意見があると思いますが、参考に厚生労働省に提出した「柔道整復師の業務についての質問」の件を紹介させていただきます。

 

令和5年8月10日 厚生労働省 回答  ※印は当会 所感を追記

 

                                    令和 5 年 7 月 17 日
 厚生労働省医政局医事課 御中

 

                                 (協)日本接骨師会  会員

柔道整復師の業務についての質問

 

 厚生労働省は、医療、医薬品や食品などに対する安全性を膨大なデータの分析や厳格な検証を行い科学的根拠に基づき、国民の健康、生活向上の役割を担っている組織で、その中には医療の現状に非常に詳しい医系技官という存在を知りました。
医系技官とは国民の健康を守るため、医師免許・歯科医師免許を有し、医学的知識・科学的判断能力・真理探究力と行政官としての施策に対する知識・調整力・公平・公正性・高い志・コミュケーション能力に長けた者で、臨床経験による医療的な知識や現場感覚を行政での業務に活かし、政策の立案から実施に至るプロセスのすべての過程に関与します。そのため、円滑で適切な問題解決ができるように、わかりやすい資料を作成し、関係者と意見交換していくことが重要な任務と厚生労働省のホームページにも示されています。(参考資料 厚生労働省HP )
そのような優秀な医系技官がいるのに柔道整復師のⅩ線検査の導入について厚生労働省は今までの要望や質問に対して医師・科学者の意見とは到底思えない非科学的な回答を繰り返し、現在の医療水準において柔道整復師のⅩ線検査の導入が患者のために必要か否かを科学的に判断していません。柔道整復師の業務は、主に骨折・脱臼・捻挫・打撲等の外傷を扱う仕事です。誰に聞いても、どこの国の人に聞いてもⅩ線検査があった方がよいと答えるのは当然ではないでしょうか。単純脱臼の整復などは1秒でも早い方が患者の負担は少なくて済みます。患者は誰でも早く正確な診断、適切な処置を望んでいます。そこで、改めて質問をさせていただきます。

 

質問1
現在、柔道整復師は捻挫の治療を医師から独立して行うことが出来ますが、その捻挫の診断に殆どの医師はⅩ線検査を行います。それは、医療過誤の観点から現在の医療では当然であることは現場に精通した医系技官なら承知していると考えますが、厚生労働省は捻挫の診断にⅩ線検査はなくても十分可能であり、レントゲン検査は過剰な検査であると考えるか。レアケースは省き一般論での回答をお願いします。

 

(答)
〇ご質問については、医師の医学的知識及び経験に基づき、個々の患者の具体的な態様から検査の必要性が判断されるものであり、一概にお答えすることは困難であると考えています。

 

※この質問は、現在の医療水準での捻挫でのⅩ線検査の有用性、必要性を聞いています。
現在、捻挫にもⅩ線検査を行うことが一般的に有用であり、医師は「個々の判断」で幼児から高齢者まで捻挫の診断にほぼⅩ線検査を行っている事実に対し、現場を熟知している医系技官ともあろう者が捻挫でのⅩ線検査の必要性についての質問に対し「一概にはお答えすることは困難」と回答を避けていますが「医系技官の仕事とは何なのか?」。もし、Ⅹ線検査の必要性が薄いなら患者への医療被曝(健康被害)への問題を放置していることになる。逆に、現状の医師の捻挫の全件Ⅹ線検査を否定していない(問題としないこと)=有用性を認めている=捻挫にⅩ線検査は必要。しかし、柔道整復師はⅩ線検査なしで捻挫の判断しなさいという行政の対応は正しいのでしょうか。

 

質問2
厚生労働省はこれまでに柔道整復師のX線検査導入の要望や質問に対し、「現行法で禁止されている」の一辺倒で全く科学的根拠が示されていません。 法律は科学技術の進歩などを国民の生活の向上に活かす為、その時代により適したものに改正していかなければならないはずです。
現在、技術の進歩により自動車もオートパイロット技術により手放し運転や無人での走行が可能となり、その技術を国民の生活に取り入れるため本年、道路交通法も改正されました。ポータブルⅩ線検査装置についても科学技術の進歩によりオートマチック化しその操作は一定の知識があれば誰でも安全に扱えるもので、放射線防護においてもポータブルⅩ線検査装置では特別な装置等は必要なく距離さえ確保できれば病室でも撮影可能なものがあるのは医系技官なら周知の事実のはずですが、厚生労働省の回答は 「人体に危害を及ぼす可能性がある。」 「教育を受けていない。」の繰り返しです。しかし、この回答からすると、柔道整復師も必要な教育を受ければ危険性は抑えられ安全なⅩ線検査が可能と考えます。柔道整復師の必要とするⅩ線検査は先述の通り高度な技術を求められるようなものではありません。これについて厚生労働省の意見をお聞かせください。

 

(答)
〇レン卜ゲン検査については、人体に危害を及ぼす可能性のあるエックス線を照射することから、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為にあたるものと認職しています。
〇このため、大学において医学の正規の課程を修めて卒紫した者で、医師国家試験に合格し、医師免許を受け、かつ、2年以上の臨床研修を受けた医師又はその指示を受けた診療放射線技師でなければ行うことができません。

 

※この質問は柔道整復師のⅩ線検査を導入するにはどのようにすればいいのか。科学の発展、技術の進歩により低線化や操作の容易化が進んだ現在の状況から、一定程度の知識、技術を習得すれば可能と考えるが、今回も整復師業務で使用するレベルのⅩ線検査がなぜ危険なのか科学的根拠を示さず、科学の発展を無視し、従来の政治的な回答を繰り返すゼロ回答。整復師業務で使用するレベルのⅩ線検査は現在の医療では人体への影響は問題とされていません。「法律が時代に合っていない」の指摘に対して医系技官の科学的な判断が現在の医療水準と大きくかけ離れていれば医系技官としての知識や能力が疑われることになります。
ブタペスト宣言(1999年 参考資料 文部科学省HP)にもあるように、科学の発展は人類全体に奉仕するべきもので、既得権者の為ではなく、広く国民の為に利用しなければならないと考えます。

先般、福島第一原発の処理水の海洋放出を開始しました。国は国民や諸外国にたいして政治利用ではなく科学的根拠に基づいた対応を強く求めています。ですが厚生労働省は柔道整復師のⅩ線検査の規制に対して科学的根拠を一切示さず現行の法律を繰り返す政治的な回答しかしません。
厚生労働省は、エビデンスに基づいた改革、規制緩和を患者、国民の為行っていかなければないのに既得権者に忖度した政治的判断による対応に見られます。これが医療現場に精通した医学者、科学者であり、公平・中立な医系技官の回答とは到底考えられせん。

 

質問3
柔道整復師も業務の範囲では患者に対し医師と同等の責任を有していると認識しています。しかし、厚生労働省は柔道整復師の業務は「医行為ではない」「医業ではない」「医業類似行為」だとしてⅩ線検査を認めるのは難しいとしています。 医業や医療行為と区別しⅩ線検査を禁止するということは柔道整復師が法律で認められている骨折や脱臼、捻挫等での判断や治療行為に過誤が生じても医学的な責任や医療行為としの責任はない、或いは、医師が同様の過誤を起こした場合よりも責任は軽く済むということでしょうか。柔道整復業を営む上で柔道整復師は勿論、患者とっても非常に重要な事ですので明確な回答をお願いします。  

 

これまでも柔道整復師は、Ⅹ線検査を使わず丁寧な診察にて診断を行ってきましたが、今後、国民の医療に対する知識や意識の向上に伴い柔道整復師の診断や治療に対しても厳しい目が向けられるでしょう。近年、骨折・脱臼の療養費が引き上げられました。これは、柔道整復師に対し、しっかり骨折・脱臼を診なさいとの号令と感じました。現在の外傷を中心とする柔道整復師の業務を正しく進めていくためにも、また患者や医療資源への負担を軽減させる円滑な医接連携にもⅩ線検査は不可欠です。このままⅩ線検査なしに業務を遂行することにより、防げるはずの医療過誤事件が発生する可能性は容易に推測できます。あくまでも国民の為の制度であり、国民にとって柔道整復師のⅩ線検査を導入すべきかを科学的に検討しなければならない責任が厚生労働省にはあります。
もし、科学的根拠に基づいた誠実な回答が得られないのであれば現行法は科学的根拠のない法律であり、それを放置し患者への医療過誤防止に消極的である厚生労働省の姿勢は行政の不作為であると考えます。
また、医系技官は科学者の社会的責任において世界の医療人、科学者、法学者の目に晒されても耐え得る回答でなければ医系技官の名を汚すことになります。
是非、科学的根拠に基づいた納得がいくご回答をお願いします。

※今回、文章の「診察」や「診断」「治療」等の医療用語の使用につき、厚生労働省は柔道整復師にこれらの医療用語の使用を認めていません。用語とは非常に重要なものですが厚生労働省は行為を表す用語を資格で換えるという実に難解なことを強いていますが、誰が行っても「医行為は医行為」「医療行為は医療行為」ではなければ法律までも歪めてしまうことになります。柔道整復師業は医師以外で柔道整復師が認められています。即ち、医師の資格があれば出来ることで医師の業務の一部であるということは明確(柔道整復師法は医師法に対する特別法)ですので、医療用語を使用しています。

 

 

(答)
〇医師と柔道整復師が業として行うことができる行為として、それぞれ医行為と 医業類似行為とではその範囲が異なっているものと認識しています。
〇個々の行為に対する貴任については、個別具体的に判断されるものであり、一概にお答えすることは困難であると考えています。

 

 

※この質問は、整復師は医業類似行為だから、医療じゃないからⅩ線検査は出来ないとする厚生労働省に対して、柔道整復師は業務において「医業や医療としての医学的な責任は負わなくていいのですか。」という質問です。厚労省は整復師の行う骨折、脱臼や肘内障の整復などすべての行為を非医行為としているのに、医行為と非医行為の責任の違いを問うているのに回答ナシ。そもそも、医師以外は「医行為でない」のなら17条 医師法違反とは?
厚生労働省が「医業」に対して意味不明の定義していることの露呈で、「医行為ではない科学的根拠」と整復師の業務範囲での「医業、医療との責任の違い(法的根拠)」の両方の説明が出来ないのであれば「医師以外が行う医行為(部分医業)」としなければならないと考えます。この柔道整復師の責任は患者にとっても非常に重要な事で所管省庁である厚生労働省は明確に示さなければならないのに回答ナシ。
科学や医療の進歩により患者の意識も向上し医療過誤など訴訟も増える中、大昔のままの制度では業務の遂行に際して疑義が生じているのに監督官庁がゼロ回答。
医業、医業類似行為問わず患者のための制度改革は待ったなし状況であり、柔道整復師のⅩ線検査導入は患者の安全、安心のため科学的に必要かつ可能な提案と考えるが、率先して患者のための改正を進めるべき厚生労働省が指摘に対して無視、放置している現実は医療過誤対策に完全に後ろ向きである行政の不作為、国民に対する背任行為である言えるのではないでしょうか。

 

 

最後までお付き合いいただき誠にありがとうございます。この問題は厚生省だけではなく政治家でも政治判断の対応が多く、何よりこうした活動は業界(存続)の為ならずと考える柔道整復師団体がありますが、それが本当に正しいのでしょうか。(協)日本接骨師会は今後も患者のための柔道整復師法改正の活動を続けていきます。



«   |   »