医療選択の自由と整復師医療
今回は日本柔道整復師協議会で、国民医療として整復師の業務の改善のため、ともに活動をしている日本柔道整骨師会(古賀功一会長)による裁判について紹介します。
この裁判は、警察が交通事故に遭った患者に対し、整復師の診断書ではダメ、医師の診断書を提出して下さいと、医師受診を強要した「整復師医療への受診妨害」そして患者にとっては、「医療選択権の侵害」という人権問題です。
この裁判の中で「控訴人(患者)には医師の医療を受けるか柔道整復師の施術を受けるかについて広義の医療選択の自由があり、これが法的に保護すべき利益であると解される」と明記されており、これは、警察だけではなく、未だに医師受診を強要する損保会社や生活保護医療にも共通することですので、参考にしてください。
経過・概要
平成22年1月8日 患者(被害者)T氏が歩行中に自動車と接触し負傷。
『現場処理の交通課の警察官より「整復師の診断書はダメです。病院に行ってくだ
さい。」と告げられる。』と訴える。
同日 K整復師を受診。整復師より患者へ整復師の発行する診断書でも法律上、問題のない
ことを説明。
1月9日 患者より警察署へ整復師の診断書を提出するも『「整骨院は医師ではないのでダメ。
後で問題があると困ります。これは預かりますが、やはり医師ではないと困る。」
といわれる。』との訴え。
2月1日 日本柔道整骨師会本部にて日本柔道整骨師会 古賀会長、尾上事務長、日本接骨師会
登山会長と神奈川県警本部から警視、警部、それに被害者が出席し協議を行い、
警察は診断書の効力は理解しているが、医師強要、受診妨害、患者医療選択権妨害
については認めず、裁判での争いとなる。
この際、整復師診断書の適正な取扱いについて県下の全警察署に通知を依頼。
2月4日 神奈川県警本部交通捜査課指導係より神奈川県下全警察署に「柔道整復師作成に係
る証明書の適正な取り扱いについて(連絡)」が発信された。
平成23年5月11日 横浜地裁 判決
平成23年9月29日 東京高裁 判決
本件裁判では、警察は、控訴人の発言に対しての助言であり、医療選択妨害等の意図はなかったこと。また、患者とその関係者に対して既に謝罪をしていること。何より、患者の意識が高く、警察が誤っているとして自身で医療選択を行い、整復師を受診したので、医療選択権の侵害は認められない。したがって実際の損害はなかったとして、この裁判は損害賠償の裁判ですので敗訴となりましたが、助言であれ、警察という立場で医師受診を促すような発言があったのであれば、なにか、腑に落ちない判決であります。
しかし、この裁判での成果は先に書いたように法的に整復師医療は医療選択権の対象であることが記されていることです。また、県警より県下全警察署に対して整復師の診断書の取扱いについて周知徹底が行われたことも大切なことです。
こうした整復師業務の正常化のために裁判等の活動を、永年続けられている日本整骨師会と古賀会長に感謝を申し上げます。