白紙委任問題
今回の白紙委任(または白紙署名)とは、整復師に掛かった患者さんに対し、初診時や月初めなどの転帰まえに、まだ金額等の記載のない療養費の請求書に委任の署名を頂くことを指します。以前より多くの整復師がこの方法で請求を行っていると思いますが、今回、「白紙署名のため不支給」とする健保組合が現れ問題となりました。
通常、契約書や委任状は、完成した書類に署名や押印をし、その前に記入されたものは無効となりますが、整復師の請求書はその性質上、白紙での署名が認められてきました。なぜなら、治療計画(方法や期間)や転帰は整復師が一方的に決めるものではなく、患者にも決める権利があるからです。患者が自分の意思で治療方法や医療機関を自由に選択することにより転医をしたり、種々の事情で中止にされたりすることは珍しくはありません。そうした患者に家や職場などに連絡し、再度、来院して頂くことは、患者には大変な迷惑で、こうした自由な選択を妨げることにもなりかねません。そして、整復師の請求には、現在、傷病名問題が存在し、それを、患者に理解させることや、事務的に煩雑な作業を強いるのは営業妨害にもなります。
今回の健保組合は、請求内容に対しての判断ではなく、白紙署名というだけで不支給としたことは、いやがらせ、受診妨害の何物でもありません。そして、この白紙委任は以前にも問題となり、解決したにもかかわらずに、再び繰り返されるのは、健保組合の不勉強が原因ですが、整復師の療養費の委任払いという制度のために起こった問題です。この正常化の軌跡では何回も出てくる言葉ですが、「誰のための制度なのか?」をよく考えると、この制度自体に問題を感じます。
<概要>
28年3月
当会会員の請求に対し「白紙委任による請求は認められていない為。厚生労働省にも確認済みである。」との理由で不支給の通知が届く。
当会事務局より健保組合の担当者へ連絡し、月初めの白紙署名は以前より厚生労働省も承知している旨を説明
資料2 平成19年10月9日 福田康夫内閣総理大臣 答弁書 抜粋
健保組合担当者より「今回の件厚生労働省へは確認済みにて厚生労働省へ確認して下さい。」との返答
厚労省保険課・医療課に問い合わせるも「いわゆるグレーゾーン(規定がない)とのことで審査請求でお願いします」との事
28年5月
関東信越厚生局社会保険審査官あて審査請求書提出
28年9月
関東信越厚生局社会保険審査官より「支払いが妥当」との決定通知
<理由 抜粋>
本件申請において、柔道整復の施術は支給要件を満たしている。
「白紙委任」については、法等に特段の規定がないことから、不支給とすることは妥当ではない。したがって、支給することが妥当であると判断する。 そうすると、不支給処分は妥当ではなく、取り消さなければならない。
平成28年12月22日
保険者より療養費が支給される
本事案も整復師の請求内容の正しさが大前提です。その正さゆえ、関東信越厚生局の理解をえられたものだと思います。理解を頂いた関東信越厚生局に感謝申し上げます。