施設入所児童への整復師医療受診妨害
事件の概要
福岡県で児童入所施設の児童が整復師を受診したところ、福岡県当局から医師ではないから「受領委任払い」の取扱いは不可とされ、「償還払い」の取扱いとなり、施設関係者はその手続きの煩わしさから、整復師受診を中止。
福岡県は整復師から受信妨害防止の要望を受けたが、放置。
当会から、再度、受診妨害防止の要望を受けて厚生省に問い合わせたところ、厚生省も「償還払い」としました。
そこで、改めて、当会から、福岡県と厚生労働省に、速やかに「妨害防止」と「再発防止」の要望を行い、理解と協力を賜ることになりました。
福岡県保健福祉部児童家庭課の不可の理由(平成12年8月3日)
①現時点で、児童施設からは、整復師の利用がほとんど出てきていない。
②各接骨院から請求を頂くとすれば、その度に、その接骨院を県の債権者として登録しなくてはなりません。継続的に利用があれば別ですが、今回のように一回だけの治療の為に、委任状を取り、県の債権者として登録するのは、あまり効率的ではない。
③施設からは医療費の他に児童に関してかかった費用を毎月請求してもらっているので、特に施設の負担ともならないこと。
④今回のケースについては、すでに施設の方にも精算払いとすることで了解を得ていること等の理由により、今回A接骨院のケースについては施設の精算払いという形で処理をしたいと思います。
⑤今後の検討課題とさせていただきます。
日本接骨師会の提案
健康保険や労災保険取扱い例に見るとおり、児童入所者の整復師医療受任者払いといえどもことさらに排斥される医療ではなく、また、取扱い件数を理由に面倒だから契約を行わずとか、さらに、既に本件は費用を精算しているから良いではないかなどという認識の疑問です。そして、今後の検討課題などとして「放置」を正当化する疑問です。この事を解決するために福岡県に次の資料を提出しました。
資料1 「児童福祉法による児童入所施設措置費等の国庫負担金について」の通知(平成11年4月30日 厚生省発第86号)
資料2 「児童福祉法による児童入所施設措置費等の国庫負担金について」通知の施行について(平成11年4月30日 児発第416号)
以上の資料に見るように整復師医療といえども受領委任払い取扱いを妨げるものではありません。それにもかかわらず、この解釈を否定し、福岡県は妨害を改めませんでした。この誤解について、厚生労働省当局に問い合わせたところ、当局も誤解をしていた為、次の妨害防止の要望を行いました。
厚生労働省が当会の要望に対し理解されたことを受けて、福岡県についても妨害防止の周知徹底を要望しました。
当会からの要望を受けて厚生労働省から次のとおり妨害防止の周知徹底を図るため通知が出されました。
厚生労働省とともに福岡県でも妨害防止の周知徹底を図る為に、次の通知が出されました。
資料6 「柔道整復師による施術」に係る療養費の支払方法について(通知)」
本事案は、九州有明整復師会所属(当時)の整復師から提起され、日本接骨師会が協力し解決された問題です。 今回、問題の解決の重要なことは当然ですが、本事案は前述のように、「その取扱いが少なく、稀なこと」「※償還払いでも費用は支払われる」「行政と揉めたくない」などで、問題としないで、そのまま見過ごされてしまうことがあるなか、意識の高い整復師によって、患者の整復師医療選択の妨害問題として提起されたことが大事です。患者のための制度が、差別的な取扱いにより、整復師医療に対して、煩わしい医療機関として疎外される問題を惹起します。この注意が厚労省から改められ、その結果、福岡県への「受任者払い可」の連絡が行われました。理解と協力を賜った厚労省と福岡県に感謝を申し上げるとともに、本問解決に取り組んだ方々に敬意を表する次第です。
(※償還払いとは、一旦、患者や利用者が窓口で全額支払い、領収書等を揃え保険者に請求し、後日、療養費が支給される制度。)