自賠責保険での医療選択権
今回の内容は、先日行われました日本接骨師会令和元年度第二回講習会で真竹副会長より報告がありました損保会社による自賠責保険患者の受診妨害の件を掲載いたします。以前より当社基準強要や医師受診強要等の整復師の診断、判断を無視する行為、また、患者の医療選択権の侵害があり、当会では国土交通省や金融庁を通じて受診妨害の防止の活動を行ってきました。しかし、未だに後を絶ちません。整復師医療を選択された患者さんの為にも先生方には本事案を参考にしていただければと思います。
概要・経過
本事案は、患者さんが自賠責保険にて医師に受診後、損保会社に整復師への受診、転医を希望したが、「医師が整復師の施術の必要性を認めないと補償の対象にはならない。」言い換えると、医師から整復師への転医に対しては、医師の同意や承諾がなければ自賠責保険の対象にはならないとのこと。これは、患者の医療選択権の侵害が大きな問題ですが、もう一つ、整復師の診断権、判断権の無視による受診妨害、名誉毀損です。整復師は業務範囲において判断する権利、いわゆる診断権があります。これには、その傷病に対し業務範囲であるか否か、治療、施術が必要であるかの判断が含まれています。そして、整復師はその業務範囲の中で骨折・脱臼以外は医師の同意なく治療、施術ができます。こうした権利を保険者は全く無視している問題です。
令和2年 9月
交通事故にて頸部を痛め整形外科を受診
令和2年10月
当該事故による、頸部痛にて接骨院を受診。患者より損保会社の担当者に接骨院を受診したい旨を伝えると「現在受診されている整形外科の担当医によって、施術の必要性を認める診断がないと補償の対象とすることができなき。」との内容の書面(資料1)が届く。
患者は整復師の治療を希望するも、医師に対して「先生の所ではなく、接骨院に行きたいのでいいですか?」とは言いにくく困ってしまい、整復師より当会事務局に連絡。
事務局より整復師に対しを確認した結果、患者の医療選択権の侵害だと判断し、損保会社に対し行き過ぎた内容ではないかと抗議するも「決まりだから」「弁護士と相談した結果」との回答。
当会より損保会社本社に『柔道整復師に対する誤解と偏見による受診妨害防止の周知徹底の要望』(資料2)と関係資料を送付し、過去の事案等を説明。書面での回答を求める。
参考資料(損保会社に送付したものとは異なりますが、分かりやすい資料なので参考に掲載しました。)
1. 平成8年 日本損害保険協会より当会からの申入れに対する連絡
平成8年11月15日
協同組合 日本接骨師会 御中
社団法人 日本損害保険協会
自動車保険部損害調査グループ
柔道整復師の施術に関する弊協会における対応を、下記のとおりご連絡を申し上げます。
記
- 平成8年10月23日開催の関係委員会において、交通事故治療に関して損害保険会社として医師の診断を求めるにあたっては、画一的・硬直的な取り扱いをせず、個別・具体的事情を十分勘案のうえ、営業妨害となるような対応は一切行わないよう留意することを確認した。
2. 上記案件の各損保会社への通知
平成8年10月23日付自動車損調研究会における柔道整復師の施術についてのお願い
柔道整復師の施術については、法令等により一定の業務範囲が定められており、この範囲内であれば医師の同意を得ずともその施術を行うことができることとなっている。交通事故治療に関し、損保会社として、相当因果関係の有無・範囲の確認等のため医師の診断を求めるにあっては、画一的・硬直的な取り扱いをせず個別・具体的事情を十分に勘案のうえ、柔道整復師にとって正当な職務に対する営業妨害と受け取られるような対応は一切行わないよう十分留意するものとする。
また医師との資格差を理由に整復師への受診を妨害抑制する、あるいは、医師の診断を画一的に求める等を統一的に定めている規定等は、自算会においても一切定めていないことを十分認識のうえ仮にもそのような規定があるかごとき対応を行わない点についても併せて留意する。
令和2年1月
損保会社よりお詫びの文書が届く→資料3