患者との信頼関係を壊す保険者の照会について
今回は厚生省の平成24年3月12日の通知(保医発0312)以来、調査・照会として整復師受診妨害が繰り返されており、当会でも厚生省をはじめ、各保険者に対して受診妨害とならないような方法で行うよう、注意・要望を行ってきました。
そうした中で今回紹介するのは、調査・照会によって返戻とした例ですが、あまりに悪質な返戻のため、当会より注意と再発防止を要望したものです。
事案の概要
S整復師に組合保険者より不支給のレセプトが返戻されました。
その内容は、患者への照会で「いつごろ負傷しましたか?」の回答書に1部位目の負傷原因は記入してあるが2部位目が記入されていない為の返戻です。
返戻されたレセプト原本とレセプトコンピューターのデータを見比べて確認したところ、同時負傷の2部位目の受傷日が入力ミスが判明したので後日、委託会社(コアジャパン)に電話にて問い合わせをしてみると「訂正印を押し再提出でお願いします。」とのことでしたので、直ぐに訂正して再提出をしました。
翌月、患者さんのところに「施術内容等の再照会について」の手紙と回答書が送られてきました。先月に続いて2回目の調査・照会書です。患者さんは封筒の中身を確認し、先月送られてきたものに加えてもう1枚、同じ書類が同封されていたことや、内容がわかりにくく非常に煩わしく感じたため、来院した際に「先生、この手紙は完全に私を通院させないようにする嫌がらせですよね!」と整復師に訴えておりました。患者さんは煩わしいと感じながらも回答書を返信しました。
その後、再度、S整復師に返戻となり、その内容確認の襴には「2部位目の負傷に関しては施術を受けていないとの回答を得ましたので返戻いたします。」との驚きの返戻理由が記載されていました。
当初は負傷年月日の入力ミスによるものであったのが、再調査では2部位目の施術は認めないという保険者の主張に疑問を感じたS整復師は委託会社(株式会社コアジャパン)に問い合わせをして確認することにしました。当初はS整復師の入力ミスであったことを伝えると委託会社からは「申請書を訂正して再提出をして下さい」とS整復師に伝え提出しました。しかしながら、何故、今回は2部位とも施術の事実があるにもかかわらず、2部位目の施術が確認できないという問題のすり替えとも感じられる理由による返戻になってしまうのか?と説明を担当者に要求しました。担当者は「調べてご連絡する。」との確約を頂きました。数週間後、担当者より「データの行き違いの為返戻してしまいました。お詫びで致します」との回答でした。患者さんを調べるだけ調べて間違いでした。これから気を付けます。では済まされないですよ。患者さんとの信頼関係にも関わる大事なことですから今回起きてしまった問題の原因究明と再発防止の要望を強く望みましたが担当者はこれを拒否しました。
本事案の問題点
○保険や医学的知識の少ない患者の勘違い、書き間違い、認識不足を利用して不正請求とすること。
○整復師への問い合わせや確認をせずに、調査会社により一方的に決定されていること
○患者に対し、照会をした上に、再請求に際し、再度、自筆署名を求める等整復師受診を煩わしく感じさせる。
今回は特に、同時負傷のため、患者は原因を一つしか書かなかったことを利用し、「2部位目の施術は受けていないと回答を得た。」と保険者が勝手に判断しています。これは柔道整復師と患者との信頼関係を壊すとともに、患者側から見た場合、柔道整復師が2部位目の請求を架空に請求したのではないかと疑念を思わせることとなります。このような行為は柔道整復師に対する名誉毀損であり、到底、許せるものではありません。
報告を受けた真竹保険部長より、原因究明と再発防止を保険者に行い、数週間のやり取りの結果、回答が得られました。
今回、医療費・療養費の適正化を目的にするのであれば、整復医療を受診する患者さんを妨害するような、嫌な思いを感じてしまうような調査・照会をするのではなく、本当に医療費・療養費を貪っている不正医師、歯科医師、整復師をピックアップして保険医療から退場してもらうための対策を行わなければなりません。国や保険者には早期に正しい医療費・療養費の適正化に向けた取り組みの実行を期待します。