医師診断優先の問題
医師診断優先の問題
今回の医師診断の優先の問題とは自賠責保険などで整復師と医師の診断が異なった場合は医師の診断に合わせなければいけないとする保険者の問題です。
医師は業務範囲も広く、Ⅹ線をはじめMRIなどの検査機器を有しているからということを理由とする保険者がいますが、それは、医師の高度な知識を持っていなければ判断の難しいものや、Ⅹ線など検査が必要な場合であって、全部がそうではありません。特に、捻挫など運動器の軟部組織の損傷などは、画像には現れない場合が多くあります。その際は、医師も柔道整復師も患者に対して問診や徒手検査などの触診等様々な方法にて診察を行い診断していますが、そのような場合でもなぜ医師の方を絶対とするのか?医師同士でも見立ての違いなどめずらしくはないのではないでしょうか。また、保険者によっては医師しか診断は出来ないとし柔道整復師の診断書を認めないとする保険者もいます。以前より当会では、業務範囲においては診断できると認識しています。もし仮に保険者の言う通り医師が行うものが診断で整復師は診断不可能なら捻挫等の治療は診断が無くてもいいことになります。なぜなら柔道整復師は法律で捻挫等の治療を認められているからです。 →資料 仙台高裁 判例
その上で保険者が捻挫等の場合においても医師の診断書しか認めないとすることは法で認められている柔道整復師の業務に対し妨害になります。当会では以前より損保会社に対しこうした妨害に対し注意、是正に取り組んでいます。 →自賠責保険での医療選択権 参照
また、保険者の中には、医師が5部位以上の診断がついているものもあるが、その場合は医師と同じにしろなどとは言わないことがほとんど、それどころか医師が5部位以上の診断がついていても整復師には5部位の請求を認めない保険者もあります。要は医師より部位数が少なければよいとし、医師より多ければ医師診断を強要している保険者が多く見られます。医師が見落としていないか、患者が医師に伝えられなかったのではないか?後日に症状が出たのではないかなどの確認もせず医師の診断だからというだけで一方的に強要するのは患者さんに対しても誠実な対応ではないと思います。
当会でも、濃厚過剰請求には注意を促していますが、先生方が自信をもって診断したものに対し、医師の診断以外の請求を認めないとする事例には、保険者に説明をして理解を求めて解決してきましたがこうした問題が多くなっています。
今回は会報にも掲載されましたが、当会と共に正常化に向け活動頂いている協議会の先生のところで労災保険という公的機関で同様の問題が発生しましたので参考に報告いたします。
概要
令和元年8月 患者、通勤途中に追突事故に遭い整形外科を受診。
患者「頸椎、右肩、腰部の痛み」の訴えに対してMRI検査を実施。
9月 症状経過おもわしくなく、T接骨院での治療を希望し転医。その後、令和2年3月 治癒に至る。
令和2年5月 通勤災害にて働基準監督署に「頸部、右肩、腰部」の3部位での請求
7月 監督署担当職員より「医師が頸部、腰部の2部位の診断にて右肩関節分は支払わない」旨の連絡あり。
整復師より納得が出来ないため担当職員、審査会と交渉するも「医師の診断」ということでけを理由に支払いを拒否。整復師より後日不服の申入れを行うことを告げるも右肩関節分を不支給とした額が振り込まれる。
T整復師より当会に本事案の報告あり。
当会より厚生労働省に電話にて事実確認とその対応のお願いを連絡するとともに、整復師に過去類似事案などの参考の資料を送付。
その後ようやく担当職員より「確認を取りT整復師の請求内容が妥当ならば不支給分を追加支給するので不服申し立ては待ってくれませんか。」との連絡有。
数日後、労働基準監督署より「いきなり不支給とした反省と、患者、初診時の医師、監督署の嘱託医の意見を聴き労働局とも話した結果T接骨院の請求は妥当なものと判断したので不支給額を支払いたい。」との連絡が入る。
今回の一番の問題は、診断が異なったことについて監督署は検証や確認もせず医師と整復師という資格の差で医師は正しく、柔道整復師は文句を言うなとされたことです。
令和2年8月 厚生労働省の担当部局に時間を頂き今後、同じような問題の再発防止のため理解と周知徹底の要望をしました。
令和2年8月26日 厚生労働省労働基準局補償課より
中央労災医療監察官
医事係長
日本接骨師会より
会長
事務局2名